【読書ログ】『幻夏』 太田愛


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読後…あまりに切なく、悲しくなる!
負のスパイラルに巻き込まれてしまった家族。彼らにあったはずのもう1つの明るい未来は、手に入らなかった。


あらすじ

小学6年生の夏休み、友人の尚に「俺の父親、ヒトゴロシなんだ」と打ち明けられた相馬。その夏の終わり、尚は失踪し、23年の月日が流れる。小さな探偵会社を運営していた鑓水(やりみず)は、「23年前にいなくなった息子を見つけて欲しい」と尚の母親・香苗から依頼を受ける。

相馬は、交通課の警察官になり、最近起こった少女の連れ去り事件について調査をしていた。現場に向かった相馬はある”印”を発見する。彼は、それは尚が失踪した場所にあったものと”同じ”印だったと気がつく。少女連れ去りと尚の失踪には関連性があると考えるが、相馬は左遷された刑事で、誰も彼の話に聞く耳を持たなかった。相馬は友人の鑓水に相談したところ、彼も尚の失踪事件を依頼されたことを知る。尚の家族や失踪事件を調査していくうちに、尚の父親”ヒトゴロシ”ではなく冤罪だったと判明。そこから物語は、複雑に絡み合い、切なく悲しい真実が明らかに…。

感想

★★★★☆

『冤罪』がテーマのお話し。無実だとしても、一度疑われると「やっていない」と言っても信じてもらえない。警察による、暴力や精神攻撃で自白をせざる得ない状況に追い込まれる。警察も「こいつが犯人に間違いない」と決めつけているので、改めて詳しい調査がされなかったり、重要な証拠や証言も”見なかった”ことにされたりする。人間の思い込みがどれだけ怖いかというのも、この小説を通して思い知らされた。読んでいると犯人は何となく察しがついたけど、「まさか!」と思う展開もあったので、最後まで真相は分からなくてどんどん読み進めてしまう。

何が悲しいって、尚は父親が「殺人犯」と思っていた。香苗は夫の無実を信じてきたのに、「罪を認めた」と警察に告げられ、夫とは離婚。尚の弟は何も知らないまま大人になり、父親の真相と自分がやってしまった許されない罪を知り、心が壊れていく。


子供の尚目線では、母親と弟を守ろうとする姿勢、無邪気で可愛かった弟が、父親の真相を知って精神が崩壊していくシーンには、切なくて悲しくなる。香苗目線では、「殺人犯の家族」という世間の冷たい目から幼い子供たちを守るために安住の地を求めていたし、子供たちを何よりも大切に思う彼女の気持ちにジーンと胸が熱くなった…。

登場人物の相馬と鑓水が出ている小説「犯罪者(上・下)」もあるらしく、読み始めてるよ\(^o^)/


どちらから読んでも話は分かると思うけど、「幻夏」では鑓水や相馬の話に”あの事件”という単語が時々出てくるから「犯罪者」を読んでいなかったら、「”あの事件”って何?」と気になるかも。

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