情景、季節、目、仕草。
それらは、言葉にしない気持ちを語ることもできる。アニメ『平家物語』3回目の視聴で、目を離し、耳で見て気がついた。
※この記事は、ネタバレありです。
生活音の存在感
今回一番印象に残ったのは、生活音の存在感だ。
木がきしむ音、水のせせらぎ、鎧の軋み、足音、風、衣擦れ、手のひらの上でサイコロを転がす音。
それらはただの背景ではなく、登場人物の感情や場面の空気を表す演出そのものだった。
例えば足音。女性は足音をほとんど立てず、衣擦れがかすかに聞こえる。
男性は、足音で性格まで想像できる。清盛はドシドシと威圧的に、重盛はトントンと軽やか。
雪と桜が刻む時間
📖【沙羅双樹(さらそうじゅ)】
— 【公式】TVアニメ「平家物語」 (@heike_anime) January 11, 2022
初夏に椿に似た白い花を咲かせることから、日本では「夏椿」とも呼ばれています。一日花で、朝に開花すると夜には花ごとぼとりと落ちるのが特徴です。京都の妙心寺塔頭東林院が「沙羅双樹の寺」として知られています。#平家物語用語集 pic.twitter.com/1vy0svVP38
時間の移り変わりは、雪、桜、落ち葉で表現される。四季折々の花たちが画面を彩り、日本の美しさを改めて感じる。
時間でいうと、びわは体が全然成長しない。でも、偉い人に頭を下げ、目上の人への乱暴さが減った。小さな礼儀や所作の変化で、成長を描いている。
「余白」が生む、想像力
TVアニメ「#平家物語」キャラクター紹介
— 【公式】TVアニメ「平家物語」 (@heike_anime) January 29, 2022
平重盛(CV. #櫻井孝宏 )
平清盛の長男。人格者として広く尊敬を集めるが、本人は清盛と諸方面との板挟みで気苦労も多い。亡者を見ることのできる左目を持っています。 pic.twitter.com/aA341w2GOy
カメラワークも見応えがある。人物を画面の左右に置き、部屋や景色が広く映す。そこにセリフがなくても、登場人物の気持ちが伝わってくる。
余白が多いからこそ、観る側の想像力も広がっていく。きっとこの物語は、観る人によって感じ方は全く違うと思う。きっと私が4回目観ても、また違うものが見えるかもしれない。
目は口ほどにものを言う
アニメ『平家物語』は、目のアップが多い。例えば、怖がりで優しい維盛が初陣を迎えた場面。
暗闇の中で片目だけがギョロギョロと動き、涙を流す。荒い息遣いが響き、戦の恐ろしさが伝わる。言葉よりも、その目が彼の心とこれからを物語る。
微笑み一つで、印象が変わる
📖【仏御前と祇王(ほとけごぜんとぎおう)】
— 【公式】TVアニメ「平家物語」 (@heike_anime) January 21, 2022
仏御前は、祇王の推挙をきっかけに平清盛の寵愛を受けた白拍子です。かつて清盛の寵愛を集めた祇王は、母・妹と出家し尼に。その後仏御前も祇王を追って尼となりました。女性たちの静かな連帯が印象的に描かれるエピソードです。#平家物語用語集 pic.twitter.com/EA6o3ouU5M
仕草もまた、強い印象を残す。私がグッと来たのは、白拍子の祇王が清盛に見限られ、新しい白拍子・仏御前の話し相手にされる場面。
祇王の口元だけ写り、彼女は仏御前に微笑む。仏御前もホッとするような微笑みを返す。それだけのシーンなのに、立場を追われた者と奪った者の複雑な感情が垣間見える。
また、重盛の子の清経の最期も印象的だ。清経は、笛を吹くのが好きな心の優しい子だ。だけど、絶望の末に入水する。夜の船の上。笛を吹き終え、笛を持った彼の腕がダランと垂れて、そのまま海へ。
この一連のシーンは彼の後ろ姿のみ。背中から絶望、諦観が伝わる。海に沈む瞬間、彼は微笑んでいた。彼が何を思ったのかは、観る人の想像に委ねられる。
「語らない」美しさ
TVアニメ「#平家物語」
— 【公式】TVアニメ「平家物語」 (@heike_anime) January 20, 2022
第三話「鹿ケ谷の陰謀」あらすじ・場面写真が到着❗️
入内して6年になるが子を授かる気配のない徳子のために、一行は厳島神社に祈願の舞を捧げる。
一方重盛は藤原氏と延暦寺のいさかい、これをもてあます後白河法皇に頭を悩ませていた。
さらにその裏では― pic.twitter.com/Z0XREmNjQC
全体を通して、セリフはそこまで多くないように思う。でもこの時代の話だからこそ、それが似合う。
平家といえど、女性や下の立場の者は、不満も文句も聞き入れてもらえない。諦めを抱えている。
だからこそ、「いざ」という時には自分の命をかけて放たれる言葉が、より重く、美しく、心に響いてくる。
花びら一枚で諸行無常を描く
打ち首の場面では、赤い花を切って落とす。直接見せるよりも残酷で、儚さを際立たせる。
華やかに咲き誇っても、花びらが散るのはあっけない。人の命も似ていると言われているようだ。
カメラワーク、情景、音楽。すべてが雅で、儚く、力強く、諸行無常を描いている。
さいご
TVアニメ「#平家物語」
— 【公式】TVアニメ「平家物語」 (@heike_anime) March 23, 2022
第十話「壇ノ浦」、第十一話「諸行無常」ご視聴ありがとうございました。
約15年間のできごとを3か月で駆け抜けましたが、お楽しみいただけたでしょうか?
放送は一旦終了しますが、書籍やBDの発売も予定しています。
引き続きアニメ「平家物語」をよろしくお願い致します。 pic.twitter.com/AYJg5Bz3Ig
アニメ『平家物語』は、決して派手ではない。けれど繊細で、優美で、儚く、危うい。初めてレビューを書いた時には、言葉にできなかったことを今回はしっかり書けた。


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