「洋服の墓場」を減らすための小さな行動

2025/09/11

エッセイ

こんな荒れ果てた墓場は見たことがない。

南米チリの砂漠は、「洋服の墓場」と呼ばれている。年間約4〜6万トンもの売れ残りや古着が、世界各国から送り込まれているとニュースで知った。

砂の大地を覆い尽くすほどの服の山が燃やされ、黒い煙が上がっていた。まだ着られそうな服もたくさんあるように見えて、ため息が出た。

すぐ捨てるなら買うな。
いらないなら欲しい人にあげて。
売る分だけ作れ。

これは、私の感情的な本音だ。

環境保護やSDGsだとか言いながら、実際は無駄の後始末をどこか遠い国に押しつけているのでは?

そのニュースを見て以来、私は着なくなった服をそのままゴミ袋に入れるのをやめた。

服を切ってウェスにしている。床やテーブルを拭いて、汚れたらそのまま処分できる。何より、ジョキジョキとハサミを動かす音に落ち着く。

真っ白だったTシャツが汚れや洗濯でよれよれになっても、最後にこうして役立つと思うと感謝の気持ちが湧いてくる。服にまつわる思い出がよみがえり、ただ捨てるよりずっと丁寧に暮らしている気がする。

ハサミを動かしながら考える。

砂漠の服の山は燃やされ、近隣の大気を汚す。行き場をなくした服は海に流れ、魚や鳥の命を奪う。

今の私の生活に直接影響がなくても、年々暑くなる夏、少なくなる魚。地球はゆっくりと、人間に逆襲する機会を狙っているかもしれない。

大量生産と大量消費は簡単にやめられないだろう。それなら、企業や国が個人に「無駄の減らし方」をもっと示してほしい。

例えば、

  • 捨てずに再利用する具体的な方法
  • 服がどんな人の手を経て作られたのかを知らせる など

野菜に「この農家で育てました」とラベルがあるように、服にも「誰が縫ったのか」「どこから来たのか」を示す。その情報を全ての洋服屋に義務付けるくらいでなければ、現実は変わらないと本気で思う。

私が洋服屋で働いていた頃も、『誰が着ているか』ばかりが話題になり、売れ残りのその後について耳にすることはなかった。そう思うと、売る側が何も知らないのも問題だ。

流行に敏感なくせに、その先の服には鈍感な私たち。チリの砂漠に山積みされる現実も、隠さずに伝えてほしい。

私ひとりの力で環境が良くなるのかは分からない。でも、自分にできることはある。

  • 買った服は長く着る
  • ボロボロになった服はウェスにするか別のものに作り変える
  • 食べ物を無駄にしない など

そんな小さな行動の積み重ねが、未来を形づくるように思う。もしかしたら、遠く離れた砂漠の山も、少しずつ変わっていくかもしれない。

ウェスになった服たち(8着分)。キッチン、バスルーム、寝室に置いている

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