印象に残ったのは、名作に込められた情熱だった。この記事は、私の体験と重ねて思ったことが中心の感想。美術の専門知識がなくても、感動や心の動きは伝わると思った。
※ネタバレなし
あらすじ
そこで見たのは、巨匠ルソーの「夢」に酷似した絵。タイムリミット7日間で真贋判定した者に、絵を譲るとして謎の古書を読ませる。ルソーとピカソがカンヴァスに込めた思いとは?
作品の特徴
美術史や画家に詳しい人は、胸が熱くなる物語だと思う。
私は、美術も絵画も詳しくない。そのため、主人公たちが古書を読むところまで、3回ほど読むのを断念してしまった。
個人的メモ
いわた書店の選書
名作に宿る情熱を受け継ぐ
最も心を揺さぶられたのは、最後の「真贋判定」の場面だった。
MoMAのキュレーターのティムと元研究者の織絵は、長年の経験を積み、理性で絵を読み解いてきた。ところが、その空気を突き破るように織絵が放った言葉は、あまりにも真っ直ぐだった。
「感動」は理屈で説明できない。名作は、頭ではなく心で見るもの。目にした瞬間に、胸を射抜かれる。それは恋に近い。
私にとっての恋は、フェルメールの《真珠の耳飾りの少女》だ。
画家のことや絵の構造も詳しく知らない。ただ、その少女に惹かれてならない。
塗り絵アプリ『Happy Color』 |
希望のような、悲しみのようなものも感じて、視線が外せなかった。
初めて見たとき、目を奪ったのは衣装の色彩だったのに、題名は「耳飾り」。その意外さもまた、忘れられない余韻を残した。
理屈を超えたとき、人は芸術に恋をするのかも。
小説の登場人物たちの「作品を守り残したい」という思いにも、胸が熱くなった。
美術に詳しいわけではない私でも、その情熱は理解できる。なぜなら、私自身も古典が大好きだからだ。
枕草子、徒然草、方丈記。千年以上前に綴られた言葉なのに、今を生きる私に響いてくる。
人間関係がうまくいかなくてひとりぼっちだった頃、彼らの言葉に支えられてきた。時代も文化も言葉さえも違うのに、共感できる。
もし誰かが残そうと努めてくれなければ、この出会いはなかった。
専門家じゃない私にできることは、「情熱を語る」こと。
世の中は諸行無常。人も、自分自身も、いなくなる。けれど作品は、誰かが伝えれば生き続けて、受け継がれていく。その営みに、私は大きなロマンを感じる。
仕事として作品を守った人もいるだろう。私のように「好き」という気持ちだけで支えてきた人もいるだろう。
その熱が繋がり今に至っているとしたら、私もまた、その流れの一部になれるかもしれない。
名作に宿る情熱は、私たちの心を燃やし続けているのだと思う。
心に残った言葉
この作品には、情熱がある。画家の情熱のすべてが。
この瞬間こそが永遠なのだ
さいご
美術のことは一切分からなかったけど、「情熱」部分は通じるものがあった。どんなジャンルであっても、好きな作品がある人なら、この熱を感じ取れるはず。
私はこの小説を読み終えて、NYのMoMAにあるルソーの《夢》を実際に見に行く目標ができた。
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